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このツールの考え方

MatheBrückeマテブリュッケ

„Ich verstehe die Aufgabe nicht.“

「問題の意味がわかりません。」

このツールの練習問題にも入っている一文です。学校では本当に必要な言葉なのに、子どもがなかなか口にできない言葉でもあります。

橋は、二つの岸をつなぐもの。どちらかの岸をなくすものではありません。母語は足場として、ドイツ語は目指す岸として、どちらも大切にします。

算数はわかっているのに、文章題や問題の指示になると手が止まってしまう――そんなとき、つまずいているのは計算ではなく、学校で使われるドイツ語であることがよくあります。MatheBrücke は、「算数がわかっているか」と「それを問うドイツ語がわかるか」を切り分けて、見えるようにするためのツールです。

  • 56課題(問題のタイプ)
  • 6対応言語:de・ja・en・tr・uk・ar
  • 約 1,000母語の指示文(1 言語あたり)
  • 1〜4年生(Klasse 1–4)

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無料で、アカウント登録も不要です。ダウンロードや、学校からの配布物も必要ありません。

名前に込めた意味 ―「橋」

MatheBrücke の Brücke は、ドイツ語で「橋」という意味です。この名前は飾りではなく、ツールの設計の考え方そのものを表しています。橋は二つの岸を行き来できるようにしますが、どちらかの岸を別のものに置き換えるわけではありません。どちらの岸も、そのまま残ります。

この名前には、教育についての考え方も込めています。母語は足場(Gerüst)として、ドイツ語は目指すゴール(Ziel)として、どちらも手放しません。母語を「早く卒業すべき通過点」と考えてしまうと、子どもは考えるための足場を失います。反対に、学校のドイツ語を避けてばかりいると、テストなどで評価される場面で、子どもがひとりで困ることになります。どちらも避けたいので、MatheBrücke では両方を同時に扱います。

三つの原則

1. 言葉の壁と算数の力を、混同しない

ドイツ語の問題文がわからないからといって、算数がわかっていないとは限りません。間違いは「できない証拠」ではなく、「どこでつまずいたか」を教えてくれる手がかりです。言葉と算数をひとつの点数にまとめてしまうと、実際にはドイツ語の力を測っているのに、それが「算数の力」として扱われてしまいます。

2. 母語は遠回りではなく、足場

理解できているかどうかは、その理解が育った言葉で確かめるのがいちばん確実です。そこで、間違えたあとには同じ内容の問題を、その子の母語でもう一度出します。母語で解ければ、つまずきの原因は言葉。母語でも解けなければ、原因は算数の理解のほうです。ドイツ語は母語に取って代わるものではなく、母語と並んで身につけていくものです。

3. 子どもを評価しない

アカウントもログインも、行動の追跡やアクセス解析もありません。学習の記録や設定は、お使いの端末の中にだけ保存されます。見ているのは子どもではなく、問題のほうです。この問題のどこで手が届かなくなったのか――知りたいのは、それだけです。

このプロジェクトがしないこと

三つの原則にもとづいて、MatheBrücke では次のことをしないと決めています。遠慮しているのではなく、正確であるための線引きです。

  • 順位はつけません。お子さん同士を比べる点数やランキングはありません。
  • 「できない子」というレッテルは貼りません。「苦手」「遅れている」といった分類はしません。
  • 診断はしません。検査の数値や年齢別の基準、診断書などは出しません。わかるのは、保護者の方や先生が読み解くための、整理された観察の記録です。
  • 学校のカリキュラム(Lehrplan)の代わりにはなりません。授業や教科書に取って代わるものではなく、授業と言葉の学びを支える補助の道具です。

言葉のつまずきか、算数のつまずきか

テストでは、どんな間違いも同じ「×」になります。でも、同じ×でも中身は違います。問題文の言葉が伝わらなかったのか、それとも算数の考え方そのものがまだ身についていないのか。どちらなのかによって、次にすべきことはまったく変わってきます。

MatheBrücke の中心にあるのは、間違えたあとに、同じ内容の問題をその子の母語でもう一度出すという仕組みです。この確認用の問題を、内部では followup_native と呼んでいます。確認用の問題(アンカー)は言語ごとに用意していて、その数は言語によって少しずつ異なります。

見分け方はシンプルです。

  • 母語でもう一度出したら、解けた場合――つまずいたのは言葉です。算数の理解は、その子の中にきちんとあります。必要なのは、ドイツ語の言い回しへの橋渡しです。ここで「算数ができない」と受け取ってしまうと、判断を誤ります。
  • 母語でも解けなかった場合――つまずいているのは算数の理解のほうです。母語で、時間をかけて取り組む段階です。ドイツ語の単語を増やしても、この壁は越えられません。

この見分けがつくと、ご家庭でお子さんにかける言葉も変わってきます。「ドイツ語が難しかったんだね。算数はちゃんとわかってるよ」と言える場面なのか、「ここは日本語で一緒に考えてみようか」と声をかける場面なのかを、保護者の方自身が判断できるようになります。お子さんにとっても、間違いが「できる・できない」の判定ではなく、「どこで止まったか」を知らせるサインになります。

具体例

例 1 ― 短い指示文の場合
ドイツ語の指示文は „Wie viele Äpfel sind es? Zähle.“(りんごはいくつ? 数えましょう)。何をすればいいかは、この一文で決まります。でも「Zähle(数えましょう)」という単語をまだ知らなければ、数えるのが得意な子でも、何をすればいいのかわからない問題になってしまいます。ここで間違えたあと、同じ問題が日本語で出て正しく数えられたなら、数える力には何の問題もありません。足りなかったのは、動詞ひとつ分の語彙です。
例 2 ― 長く、二段階になっている指示文の場合
„Im Regal stehen 7 Körbe mit je 6 Äpfeln. Der Lehrer legt noch 4 Äpfel dazu. Wie viele Äpfel sind es?“(棚に、りんごが 6 個ずつ入ったかごが 7 つあります。先生がさらに 4 個置きました。りんごは全部でいくつですか)。ここには「je(〜ずつ)」「dazulegen(さらに加える)」という、日常会話ではあまり使わない表現が二つ出てきます。計算は 7×6+4 とシンプルなのに、文を読み取る負担だけが大きい――こういう問題こそ、いちばん誤解を生みやすいのです。
この仕組みの限界
この見分け方は、あくまで手がかりです。「母語で解けたから、原因は言葉だけ」と機械的に決まるわけではありません。一度正解できたかどうかは、その日の体調や気分にも左右されます。ここでわかるのは結論ではなく、次に話し合うための材料です。正式な判断が必要な場合は、学校や専門機関にご相談ください。

なお、アプリがドイツ語の問題への答えを自動で採点し、「言葉のつまずき」「算数のつまずき」に振り分けてくれるわけではありません。出題の流れと記録を、大人が読み取って判断するためのツールです。

できること

公開中 ― 6 言語対応

  • 1〜4 年生(Klasse 1–4)向けの 56 課題。学年を選ぶと、その学年の課題から始まります。
  • 指示を母語で表示。画面の指示は、選んだ言語で表示されます。日本語を選べば、指示も選択肢も日本語になります。
  • 間違えたら、母語でもう一度。同じ内容の問題を母語で出し直します。これが、上で説明した「言葉か、算数か」を見分ける手がかりになります。
  • 読み上げ機能。まずアプリに収録済みの音声を再生します(de-DE・ja-JP・en-US・tr-TR・uk-UA・ar-SA)。収録音声がまだない文だけは、Microsoft Azure の音声サービス(ドイツ西部リージョン、EU 内)で一度だけ音声を作成して保存します。このとき送信するのは問題文だけで、個人情報や学習記録は一切送りません。どちらも使えない場合は、端末の音声合成機能で読み上げます。
  • 右から左に書く言語にも対応。アラビア語を選ぶと、画面が右から左の表示に切り替わり、数字は東アラビア数字(٠١٢٣٤٥٦٧٨٩)、演算記号は × ÷ − で表示されます。

課題の数や翻訳の数は、言語によって少しずつ異なります。ひとつの訳文を機械的に 6 言語へ複製したのではなく、言語ごとに用意しているためです。

ご家庭での使い方

宿題のたびに問題文をすべて訳す必要はありません(それでは長続きしません)。おすすめは、お子さんと並んで画面を開き、まず母語で「この問題、何を聞いているのかな?」と一緒に確かめてから、ドイツ語の指示文を見せるやり方です。読み上げボタンを押せば、ドイツ語の音声がそのまま流れます。お子さんが言葉につまずいたら、いったん日本語で同じことを言ってみてください。同じ内容を日本語で言えたなら、その日、算数については何も取りこぼしていません。1 回 15 分ほどで切り上げてもかまいません。記録は端末に残るので、次に開いたときは続きから始められます。

このツールでできないこと

このツールに頼りすぎないよう、限界もはっきりお伝えしておきます。

品質について、いまの状況

公開のたびに、自動チェックを行っています。アプリが起動するか、各言語版がそろっているか、画面のすべての部分が正しく表示されるか、問題と答えがきちんと対応しているか、指示文に抜けがないか――こうしたチェックをすべて通してから公開し、さらに公開後の URL を実際に開いて確認しています。手元の環境で動いただけでは、公開できたとは見なしません。

ネイティブスピーカーによるチェックは、これからです。前述の 5 言語は、まだ母語話者による確認・修正を受けていません。自動チェックで見つかる問題と、母語話者が読んで初めて気づく不自然さは別物で、その差はまだ埋められていません。ここがいちばんの課題だと考えています。

公開状況:6 言語すべてに対応した版を、そのままトップページで公開しています。1〜4 年生のすべての課題を、ドイツ語の指示文と 5 つの母語(日本語・英語・トルコ語・ウクライナ語・アラビア語)で利用できます。次のステップは、ネイティブスピーカーによるチェックです。

ご協力のお願い ― 一緒に改善してくださる方を探しています

MatheBrücke は、個人がひとりで作っている小さなプロジェクトです。だからこそ、外からの声がとても大切です。いま特に必要としているのは、次の三つです。

  • 日本語のチェック。画面に表示される日本語が、お子さんにとって自然で読みやすいかどうかを見ていただけると助かります。全部でなくてかまいません。気になった文を 5 つ教えていただくだけでも、次の改善につながります。
  • ESU や日本語指導に関わる先生方の声。「この言い方だと、うちの子は止まってしまう」「この言葉が足りない」といった具体的なご指摘が、いちばん役に立ちます。ドイツ語の指示文で手が止まったけれど、計算はできていた――そんな場面があれば、ぜひ教えてください。
  • 助成・寄付について。財団や公的プログラム、個人としてのご支援をご検討の方に向けた詳しい説明は、ドイツ語版の about.html にまとめています。日本語版では、ここでのご案内のみとさせていただきます。

ご連絡は、お問い合わせフォームからお願いします。いただいたご連絡には、一つひとつお返事しています。

ライセンスとお問い合わせ

プログラムのコードは MIT ライセンス、翻訳文と解説文は CC BY-SA 4.0(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 4.0 国際)で公開しています。どちらも、学校や支援の現場で自由にお使いいただけます。

同じ考え方で作っている姉妹プロジェクトに、Word Catch(小学生向けの多言語単語学習)と Mündigkeit(多言語対応の帰化テスト対策)があります。どちらも、母語を足場にして、暮らしている土地で必要な言葉へ橋を架けるという設計の考え方を共有しています。

このプロジェクトは、個人が非営利で開発・運営しているもので、会社や団体ではありません。運営者・連絡先・プライバシーについては、運営者情報(Impressum)とプライバシーポリシーをご覧ください。

アプリ本体では、アカウント、ログイン、追跡、アクセス解析、Cookie はいずれも使っていません。学習の記録と設定はお使いの端末の中(localStorage、キー mathebruecke_v2)にだけ保存され、外部には送信されません。お問い合わせフォームからご連絡いただく場合は、Formspree(米国のサービス)を経由して送信されます。

お子さんは算数を母語ではわかっているのに、ドイツ語の指示文でつまずいているだけかもしれない――その可能性を確かめるためのツールです。この日本語版は、ご家庭で読んでいただく内容に絞っています。仕組みや品質管理、データの扱いについての技術的な説明は、ドイツ語版(about.html)をご覧ください。